「どうだい、かわいいじゃねえか。自分でいじってみなよ。それとも俺にさわって欲しいか、舐めて欲しいかい、え、どうなんだよ、ええ」
「・・・」
「そうかい、舐めてほしいのかい、こんなふうに」
「・・ッ」
いきなり生温い舌が無慈悲に胸の鋭敏な箇所をとらえていたぶったので、殺生丸は飛び上がって押さえている腕を払いのけようとした。だが万力のような力でつかみとられた手首は動きがとれなかった。
「言うことを聞かねえってんだな。ならこっちはどうだい、この肝心かなめのほうはよ」
つかまれた手首が強引に下腹に近づけられる。虜囚がありったけの力でもがいた。
「やめろ、何をする、よくもこんな恥さらしな真似を」
「へーええ、そうかねえ、ここを自分でさわって確かめるのがそんなに恥さらしかねえ」
「あっ、あ・・・は、放せ・・・・」
「お育ちが違うんだなあ、自分のをさわったこともねえのか。そんな品下れるわざは人前じゃできねえってわけか。どうしたい、真っ赤になってさ、なんでそう恥ずかしがるかな、もったいねえ」
「だ、黙れ、こ、こんな浅ましい真似を、させられるくらいなら、いっそひと思いに」
「ほう、ひと思いになんだい、犯されたほうがマシってのか、大胆なことをいうじゃねえか。ふふ、まったくわからねえな、おひいさんてのは」
妖怪の手が白い手首を放し、相手の体を引き寄せる。
「ここに指を入れておもちゃにされるときゃ、生娘みたいに死にそうな顔して言いなりにされてるくせに、自分で自分を弄るのを見られるくらいなら男にやられるほうがマシだってくらい恥ずかしがって抵抗するってのはな。実際とんでもねえよ、こんなきれいな体が色ごとの楽しみもろくに味わったことがねえなんてのは罪悪だぜ」
ゆっくりと震える体を押し倒してその上にのしかかりながら、妖怪は言った。殺生丸は全身をこわばらせた。両のひざがゆるやかに開かされ、膝裏をつかんだ腕が足を左右に持ち上げる。虜囚の体が小刻みに震え、怯えた唇から血の気がひいた。
「・・・そう、もろに犯されるって顔すんじゃねえ、くそ、顔見ただけでいっちまいそうになるじゃねえか、まったく」
妖怪は組みしいた相手のあまりに初心な色香に悩殺されてくらくらときたようであった。おさえこまれているほうは、雪のように白い肢体を情け容赦もなく押し広げられたままの格好でなおも身を震わせている。
「ったく、参ったな、こんな手足広げて色っぽい様を拝ましてもらうとぞくぞくしてくらあ」
妖怪が強引に体をおしすすめてくる。のしかかられた肌は硬く、体は重かった。虜囚が苦痛に耐えようとするように頭をふり、乱れ髪のさまがいっそう艶めかしく妖怪の気持ちをかきたてた。
「・・・あっ・・・・あ・・・・」
「素敵だぜ・・・おひいさんよ・・・まだこれからさ、お楽しみはな・・・・」
* * * *
「おい、冗談じゃねえよ、男を知らねえって、それでこんな色っぽい顔ができるのかよ、こうやんごとねえあたりってのは、たまんねえな」
妖怪が耳元でささやく声がする。
「国を傾けるってのはこういうのを言うんだろうな。まったくなんて声出しゃあがる、おっとそう動くなよ」
無理やりに広げられた足の内側をなで上げられて、殺生丸の体が欲情にひきつった。
「こたえられねえなあ。上淫ってのは一度味わうとやめられねえというが、たしかにその通りだぜ。え、こうと来いよ、そうさ、」
「・・・っ」
背中から白い体を抱え込む妖怪のもう片方の手が、巧みに胸元をまさぐりながら下におりてゆく。すべらかな肌をたのしむような手つきであった。触れられた殺生丸が身悶えして逃れようと体を伸ばし、またぐっと後ろへ引き戻される。か弱い抵抗がいっそう興をそそるようであった。
「どうしたい、悪くねえだろう。いやか、いやなのか、え、本当かよ」
「あっ・・・・」
突き上げられるたびに、半ば開いたくちびるから途切れ途切れにあえぎ声がもれる。もはやそれを止めようという意志に、もてあそばれる肉体がついて来ぬ。妖怪の手がふいに殺生丸の秘所にふれ、虜囚の肢体がこわばった。
「へへへ、そういう上品で綺麗な顔が必死に目つぶって耐えてる風情ってのはまったく色香のあるもんだなあ。鏡に映して見せたいくらいだぜ。感じるんだろ、素直になりな。可愛い顔してなまめかしい声出しやがって、こうしてやるぜ」
「あっ、あ、ああ・・」
急に力をこめられて、おそろしく官能的な喘ぎが思わず口をついて飛び出した。殺生丸は開かされた足を閉じようと甲斐なく身をもがいたが、妖怪は後ろからわざとその両足をいっそう開かせ、剥き出しの足の間に指をからませて傍若無人な仕打ちに出たので、ついに殺生丸も耐えきれず小さな悲鳴をあげた。
「よせ・・・あ・・・」
「よせって俺に命令する気かい、こんな格好させられててこの俺様に頭ごなしにいいつけようたあ、さすが上つ方だけのことはあるな、ふふ、俺にここをこんな風になぶりものにされてるくせによ」
「んっ・・・」
妖怪は明らかに場数を踏んでいて、こうした手管にはおそろしく長けているらしかった。巧者なその指で追い上げられて、殺生丸は思わず頭ごとのけぞってうめいた。無理やりに引きずり出された快楽とはいえ、いやだからなおのこと一層、苦しいあえぎはなまめかしく、感じる肌は敏感に反応し、なぶられるたび浮き上がって不安定な下肢の先まで電流が走った。