「どうしたい、逆らうとお仕置きだぜ・・・やってみな、やれよ、さあ・・・」
残忍なささやき声が優しく、だが有無を言わせぬやり方で、殺生丸に従うよう責めるのだった。求められることのあまりの淫靡さに殺生丸の耳朶が赤く染まった。
「そんな・・・そんなことを・・・」
「言うとおりしなよ。わかってるんだろ、ええ・・・指まで入れられて慰みものにされてる身で抵抗しようってのかい・・もっとひどくはずかしめられねえと言うことが聞けねえか、だったらここに外の連中を引き入れて、今のこの格好をさらしてやろうか、え」
「よ・・せ・・・・・・」
耐え切れず虜囚の声がうわずった。妖力のまったく使えぬ今、逆らいたくともそうするすべは何一つなかった。
「だったらやりな・・・やるんだ・・・さあ、締めてみな・・」
美しい表情が苦悶と羞恥にあえいだ。その羞恥がいっそう相手の楽しみをかきたてることも殺生丸は知らぬ。
「・・・そうだ、いいぞ、できるじゃねえか、ちゃんと締め付けてるな・・・ようし、力を抜いて、もう一度だ・・・」
恥ずかしくてももはや逆らうこともできず、虜囚は残酷に強いられた奉仕を繰り返した。
「いいぞ、その調子だ・・・綺麗な顔して、みだらな腰の使い方しやがるぜ」
強いられた淫らな振る舞いを口に出されるのが、体の中に差し入れられたままの指と同様、殺生丸の感じやすい神経をいっそう刺激した。悩ましいため息がくちびるからこぼれ出た。
「どうした、休むんじゃねえ、続けてみな、そら、ゆるめて、もっと締めて、そう、もっとだ、よおし、ゆるめていいぜ・・・だいぶん素直になったじゃねえか」
「・・・すこし、休ませ・・・・くるしい・・・・」
行為そのものより、心のほうが耐え切れなくなって、虜囚がかすれた声で訴えた。
「こんなのはまだ序の口だぜ。まったくおひいさんてな、やわにできてるなあ」
「頼む・・・・・息が、苦し・・・少しだけ、頼む、休ませ・・あ、あ・・・・」
「ふふん」
妖怪は笑ったが、虜囚の息づかいが本当に苦しそうなのと、相手が初めて自分から折れて許しを乞うたので、彼はむごたらしくなぶっていた指を引き抜いて虜囚を少し楽にさせた。なぶられ続けてはりつめていた力が抜けて、殺生丸がくずれるようにその場に倒れこんだ。
「慣れないことをさせられて気が遠くなりそうかい、え、内気なんだな」
ニヤニヤしながら、妖怪は横になって荒い息をしている相手を見下ろした。長い雪のような髪が乱れて地面に広がり、目元の紅と頬の印、ひたいの淡い紫の三日月がまるで薄化粧をしたように白い肌に冴え冴えと映っている。
着物のすそから投げ出されている足首をふいにつかまれたので、殺生丸はびくりとした。
「綺麗な足首だなあ。爪なんか桜色だぜ」
すべらかな手触りを楽しむように、妖怪は片方の足首を自分の手元に引き寄せた。
「どうしたい、なんでそう震えてる、あんよも髪とおんなじで触られると感じちまう場所なのかい。さわって悪い場所でもねえだろう、なあ」
引っ込めようとしたもう片方の足首もつかんて引きずり寄せられたので、殺生丸がかすかな悲鳴をあげた。妖怪はますます悦にいったように、その足首をおもちゃにしながら含み笑いした。
「ふふふ、逃がさねえよ、おひいさん、逃げられねえよ。こんなあんよなんぞ、ひとひねりでへし折れるんだからな、わかってるだろ。おっと、心配すんな、そんな乱暴なこたぁしねえよ、代わりにこうして可愛がって」
敏感な足の裏をわざとらしく愛撫されて、感触に殺生丸は失神しそうになった。妖怪の指先がほっそりしたかかとから足の裏を滑り、足指の間をまさぐる。殺生丸は髪を乱して足を引こうともがいたが、つかまれている足首はいっかな放してもらえず、それどころか足裏への愛撫はいっそういやらしく、挑発的になってきた。虜囚が耐えかねたように呻いた。たかが己れの足が自由にさせてもらえぬだけのことというのに、その行為はたとえようもなくみだりがわしく、いやらしい、しかも何か抗えない支配的な感じを与えた。
「死にそうな顔してやがる。そんなにいいかい、死にそうかい・・・・実際、ふるいつきたくなるようなしぐさをするぜ、頭のてっぺんから足の先までな。結構なもんだなあ、上淫てのは。こう、うぶくって綺麗で、しかも色っぽいときちゃあな」
片方の手に捕らえたままの足首から、ふくらはぎを伝い、むき出しの膝裏から太ももの奥近くまで、もう片方の指でゆっくりとなぞるように行きつ戻りつしながら、妖怪はつぶやいた。虜囚の体は、片肘をついたまま、ほとんど瘧にかかったように震えていた。内股の奥に指が近づくに連れて、ついに耐え切れなくなった相手が狼狽したように身を引いて逃れようとするのがわかる。妖怪は面白がって、足をつかんだまま、相手のかぼそい抵抗を楽しんだ。
明らかに虜囚がこういったすべてに慣れておらず、己れのどういう愛撫にもひどく敏感で多感な反応を示すのが、妖怪にとってはいっそう新鮮で面白みを増すことなのだった。彼はまた、殺生丸の肩が震え、さぐられる足の内側に明らかに逃れるだけではない何かこらえようとするような力がこもるのを感じ取った。
「かわゆいねえ、男に内股探られるのはいやかい。いやなことばっかりなんだなあ、ええ、おひいさん、ここをさわってほしいって思うところはねえのかよ。言ってみなよ、さわってほしいところをよ。全然ないわけじゃないんだろ、いける口なんじゃねえのか、本当はさ」
妖怪はようやっと捕らえていた足を放して、うつ伏している相手を背中から抱きおこした。切れ切れに虜囚があえいだ。
「な・・なにを・・・・・・」
「何って、なあ、俺が何をしてもお前が感じるのが嫌みたいだからよ、いっそ自分でしてもらおうと思ってよ・・・ここなんかどうだい、ええ」
半ば滑り落ちてもまだ残っている薄いひとえをわざとらしく肩まで引き上げてやりながら、妖怪は殺生丸の右手首をつかんで、汗ばんだ白い胸元に浮かぶ薄紅色の乳首に押しつけた。虜囚が恥じらって身をよじるのへ責めるように耳にささやきかける。